価格高騰を小売・卸業として何ができるか「最新の経済から直近の未来を読み解く」

Eコマース, マーケティング

■GDPからみえる現状

2023年第二四半期の内閣府のGDP速報値は前の3か月と比べてプラス1.5%となり、3四半期連続のプラスとなっています。
このことから経済成長をアピールする動きがありますが、外国旅行者によるインバウンド消費と輸出の伸びによる外需や、物価高騰の影響がGDPを上昇させる要因となっています。

しかし国内向け企業は厳しい現状です。物価高の影響で民間消費は前期から▲0.5%減少しており、物価高は今後も続くと予想され、消費の冷え込みは業界によっては大きな打撃を受けることになりそうです。

GDP上昇要因

  • 外国からの旅行者増
  • 輸出増
  • 物価高

懸念事項

  • 消費(内需)の低迷

■賃上げによる影響

各企業物価上昇により賃金のベースアップが行われており東京商工リサーチの調査では8割近い企業が何らかの賃上げを行っているとのデータもあります。

しかし実際は5%以上の物価上昇に対して多くの世帯は賃上げ分で賄えておらず、実質所得が減少している状況です。これらが節約マインドを生み出しさらなる消費の低迷を招いています。

また需要増による価格上昇であれば賃上げ妥当と考えますが、エネルギー費や仕入れ高騰などによる価格上昇にも関わらず賃上げという矛盾が存在しています。一部の企業では原資の無い賃上げにより企業の利益減少が起こっていると考えられます。

懸念事項

  • 実質所得減
  • 企業の利益減

■コロナ過からのECのジャンル別比較

市場でも状況は目まぐるしく変化しています。

ある企業の楽天モール内店舗での2022年8月と2023年8月の顧客の消費割合の変化を調べてみたところ顧客購買ジャンルが大きく変化していました。

増加ジャンル

  • バッグ小物 = 6.1% → 17.93%
  • スポーツアウトドア = 2.9% → 7.3%
  • 車用品バイク = 0.59% → 5.63%
  • メンズファッション = 1.13% → 4.75%

減少ジャンル

  • インテリア = 14.15% → 4.8%
  • 日用雑貨 = 12.16% → 5.2%
  • 食品 = 6.4% → 3.05%
  • 家電 = 4.7% → 2.7%

コロナ過を抜け切れていない2022年では家電やインテリアや日用雑貨など家中需要が高かった事に対し、2023年はアパレル・スポーツ・レジャーなど屋外を意識したトレンドに変わってきています。

通常であればここまで大きく顧客ニーズが変化することは稀で異常事態と言えます。特に問題となるのは需要の変化により商品の仕入れと価格を変えなければならない事です。

2022年をベースに仕入計画を行った小売店は余剰在庫が増え値下げをしなければ売れない状況になっている可能性があります。値下げの影響により家中需要は市場全体が過度な価格競争に陥ってしまう懸念もあります。

小売店やメーカーは今までと違った時代に合わせた戦略が求められています。

■求められるもの

ベースとして消費者は購買力が落ちており、今後は商品・サービスのベネフィット(メリット)を多少犠牲にしてでも価格の安いものを選ぶ、もしくは選ばないといった選択を迫られます。
その時に今までと同じベネフィットで、少しでも安く消費者にサービスを提供できるならば他社を圧倒する可能性が高いといえます。

また高単価なものは富裕層などにターゲットを変更しなければいけなくなるかもしれません。
その時には価格競争が激しいECモールではなく、実店舗や自社ECサイトでのブランディングが差別化に必要になってきます。

  • 同じベネフィットで価格を抑える。= コストを抑える。新たな商品開発、仕入先の開拓。
  • 中間層をターゲットにしていた贅沢品のターゲットを富裕層を含めて再設定 = ECモールではなく自社サイトでのブランディングによる集客。

■最後に

内需を対象とした企業においてはピンチに陥りつつある現状ですが、チャンスに変えられる部分は残されていると考えます。

今後の事で少しでお悩みがあればアドセイルにご相談頂ければと思います。

この記事を書いた人

三井優治 ECソリューション部 課長

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